
交子(こうし)は世界で初めて作られた公式の紙幣で、11世紀のはじめごろ北宋時代の中国・四川省で登場しました。当時は鉄でできたお金が重すぎて取引に不便だったため、紙でできたお金という新しい方法が考え出されました。でも紙幣は簡単にまねされる危険があったので、宋の政府は技術や制度、法律を組み合わせて、偽物を作らせないための仕組みをしっかり作りました。
1. 特別につくられた「楮紙(ちょし)」を使う
交子は、四川地方でとれる楮(こうぞ)の木の皮から作られる「楮紙」という特別な紙だけで印刷されていました。この紙は丈夫で表面がつるつるしていて、その上、作り方もとても複雑でした。さらに、楮の材料や紙の製法は役所がすべて管理していたので、普通の人が同じような紙を手に入れるのはほぼ不可能でした。この紙は後に「楮幣」や「楮券」とも呼ばれるようになり、紙幣を表す言葉としても使われるようになりました。
2. 細かくて複雑な絵と何色も使う印刷
交子は赤や黒など二色以上を使って印刷されていて、その図案には建物や木、人の姿が細かく描かれた「屋木人物(おくぼくじんぶつ)」と呼ばれるデザインが使われていました。このような絵を木版で正確に彫るのは非常に難しく、偽物を作るには現実的に無理がありました。また、紙のふちには入り組んだ模様が施されていて、細かい部分までそっくりに再現するのはとても大変でした。
3. 光にかざすと見える水透かしを入れる
交子には、今でも紙幣に使われている水透かし(ウォーターマーク)の技術がすでに取り入れられていました。これは紙を漉(す)くときに厚さを変えて、光にかざすと模様が浮き上がる仕組みです。この方法は後の時代の紙幣の偽造防止の元になったと考えられており、世界で最も古い水透かしがある紙幣とも言われています。
4. いろいろな役所の印と自分だけの暗号をつける
交子には、発行元の役所(たとえば益州交子務)の印や金額を示す印、紙をつなぐ部分に押す騎縫印(きほういん)など、いくつもの正式な印章が押されていました。それに加えて、「密押(みつおう)」と呼ばれる、発行者が自分で決める秘密の記号も書かれていて、他人には意味がわかりませんでした。偽物を作るにはこれらの印と暗号をすべてそろえなければならず、実際にやるのはほとんど不可能でした。
5. 一定の期間が過ぎたら新しいものに取り替える
交子は「分界(ぶんかい)発行」というルールに基づいていて、だいたい2~3年ごとに新しい紙幣と交換しないと使えなくなるようになっていました。これによって古くなった紙幣や偽札が市場に出回るのを防げたため、偽造されるリスクを大きく減らすことができました。
6. 厳しい罰で真似させないようにする
『宋史』などの古い記録によると、交子を偽造した人はすぐに死刑にされました。実際に出土した交子の写しにも「偽造者は処刑する」とはっきり書かれていて、法律による抑止力がとても強かったことがわかります。元の時代になると、紙幣に使う桑の皮でできた紙を個人が買うことさえ死刑の対象になり、管理はさらに厳しくなりました。
まとめ
交子の偽造対策は単なる技術ではなく、「信用」という紙幣にとっていちばん大事なものを守るための全体的な工夫でした。紙の選び方から印刷のやり方、運用のルール、そして厳しい罰まで、さまざまな面から偽物が出回らないようにしていました。








